
円高・円安と為替変動のメカニズム
経済環境の変化や金融市場の動きは為替相場と どう関係があるの?

株や投資をしている人にはもちろんのこと、ふつうに生活をしている人にとっても外国為替相場は密接な関係にあります。政治や経済、自然災害にも影響を受けるため、お金の価値が刻々と変化するからです。投資をはじめる前に、経済環境の変化や金融市場の動きと為替相場の関係性を知っておきましょう。
そもそもお金の価値が変動するのはなぜでしょうか? それは需要と供給の関係に起因します。簡単にいうと円を買いたい人が増えれば「円高」に、売りたい人が増えれば「円安」になります。 たとえば10,000ドルの外貨を1ドル=110円(元金110万円)で購入したとします。このとき日本円の需要が増え為替相場が1ドル=100円に変動したら円高となり10,000ドル×100円=100万円に下落します。一方で日本円を売る人が増えて1ドル=120円に変動したら円安となり、10,000ドル×120円=120万円に上昇。つまり外貨や債券を円高で買い、円安で売ると償還金や利息が効率よく運用できることになります。ただし、「円」ではなく、外貨のまま受け取るときはこの影響を受けません。
こうした為替相場の変動は、国内金利にも影響を受けることがあります。たとえば円安ドル高になった場合、日本円で米国の商品を購入しようとすると価格が上昇。さらに輸入価格が上昇すれば、物価も上昇します。するとお金を借りたい人が増えて、銀行の金利が上がります。一方で、円高になると金利が下がっていきます。
つまり、日本金利が上昇すると為替相場は「円高ドル安」傾向になり、逆に日本金利が低下すれば「円安ドル高」になるというわけです。 また、アメリカ金利と外国為替相場の関係から国内金利が影響を受けることもあります。アメリカの金利が上昇すると、ドルの需要が高まり日本円は低下するので「円安ドル高」傾向になるのです。 ちなみに円安が進んで物価の上昇が継続している昨今のような状態になると、日本銀行は企業などに融資する政策金利を高めにし、円高が進むと緩和するという金融政策を打ち出します。
為替相場の変動は、株式市場にも関係してきます。そのうち大きく影響を受けるのは貿易関係の企業です。自動車産業などの輸出企業は円の価値が高くなっている「円安ドル高」だと企業業績を上げることになり株価も上昇します。逆に食品産業など輸入企業は原価が上昇するので「円高ドル安」のほうが有益となります。株式市場や経済全体に影響があるとはいえませんが、昨今の我が国では輸出産業の影響が大きいことから、円安ドル高のときに日経平均株価などの上昇が見られるようです。
このように経済環境や金融市場の変化が世界の為替相場と密接に結びついています。プロの投資家でも成功のセオリーを持つ人はなく、工夫をこらしているといいます。テレビ、ラジオ、新聞、インターネットなどさまざまな情報に注目してみましょう。為替の動きを見ていれば、おのずと世界の動きも見えてくるはずです。